抄録
Triggering receptor expressed on myeloid cells 1 (TREM-1)は,マクロファージや好中球に発現し,その刺激はToll様受容体刺激による炎症性サイトカインの分泌を増幅させる.一方,マウス敗血症モデルのTREM-1細胞外ドメイン融合蛋白(TREM-1-Ig)によるTREM-1阻害療法は生存率を改善させた.これはTREM-1阻害は感染防御に必要な炎症性サイトカインを温存しつつ炎症を抑制することを示唆する.我々はこれまでに,TREM-1の関節リウマチ患者滑膜細胞での発現,及びTREM-1阻害のコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスでの治療効果を報告した.しかし,TREM-1のリガンドは未知であった.今回,これを同定すべく,TREM-1-Igを用い,リガンド発現細胞を検討した.その結果,マウスB細胞やB細胞腫瘍株A20上にTREM1のリガンドを発見した.そこでA20のcDNAライブラリーを作製,発現クローニングを行い,TREM1リガンド分子を同定した.さらに同分子に対するモノクローナル抗体を作製し,CIAマウスに投与したところ,予防的にも治療的にも関節炎改善効果を認め,本分子がCIAにおいてTREM-1の重要なリガンドとして機能することが判明した.一方,免疫抗原に対する明らかなT細胞及びB細胞反応への影響は認められず,本抗体の関節炎改善効果は,TREM-1-Ig投与と同様,獲得免疫の抑制ではなく,炎症反応抑制によるものと考えられた.抗TREM-1リガンド抗体療法は既存の生物学的製剤とは異なり,結核や重症感染症などの副作用を増加させない有効な関節炎治療法となることが期待される.