2019 年 47 巻 2 号 p. 74-81
近年, 成人期Attention Deficit Hyperactivity Disorder (ADHD) の診断に役立つ神経生理学的指標の確立が期待されるなか, 病態仮説として有力視されているデフォルトモードネットワーク (以下, DMN) 障害仮説に注目し, DMNの抑制/活性化を要するワーキングメモリー (以下, WM) /自己参照 (以下, SR) 課題を遂行中の事象関連α帯域パワー値 (以下, ERpow) が, 両課題間で乖離するかを検討した。対象は右利き健常男性, 12名。性格を表す形容動詞を刺激に用いた。警告刺激 (S1) の2 s後に標的刺激 (S2) が呈示され, WM課題ではS2がS1と, SR課題ではS2が自身の性格と合致するかをそれぞれ判断し, 合致時に2 s後の命令刺激 (S3) を待ちボタンを押すよう被験者に求めた。SR課題中, α帯域ERpowはS3前1 sの区間で増大を示したが, この現象はWM課題中の同区間では観察されず両者の乖離は有意だった。この一過性のα帯域活動の増大は, 注意が内界に向け切り替わる際のDMNの活性化を反映している可能性があり, 注意の切換えが困難な成人期ADHDの診断に役立つ神経生理学的指標になりうると考えられた。