脳腫瘍では覚醒下手術の有用性が認知されているが, 脊髄腫瘍での報告はない。当院で施行した覚醒下脊髄腫瘍摘出術の安全性と有用性を後方視的に検討した。症例1) 65歳女性, 胸髄上衣腫。症例2) 66歳女性, 馬尾髄膜腫。 症例3) 33歳男性, 頸胸髄上衣下腫, 2回施行。術中, 痛み, 運動・感覚障害, 耐容膀胱容量減少等の神経症状を認め, 操作の中断等により, 症例1, 2は全摘出, 症例3は, 部分摘出で終了した。全例目的とした神経機能の評価が可能であった。有害事象は, Grade 2, 3の疼痛と皮膚障害であった。脊髄腫瘍の術中神経機能モニタリングとしてはSEPやMEPが一般的であるが, 即時性や手術操作との干渉に問題がある。覚醒下手術にはそれらがなく, 本症例群でも操作中に速やかに症状の悪化を検知できた。有害事象は軽減可能であった。脊髄腫瘍の覚醒下摘出術は, 安全に目的を達成でき, 従来のIONMに比べ情報量が多く迅速で, 術中判断に有用であった。
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