2023 年 51 巻 2 号 p. 68-72
自閉スペクトラム症 (ASD) の多くに感覚過敏や鈍麻といった感覚処理障害 (SPD) が併存する。SPDを受動 (低登録・感覚過敏) と能動 (感覚探求・感覚回避) に分けた場合, 受動傾向が高機能ASDのSPDをよく表現し, その要因に求心性伝達障害が想定される。SPDに寄与する求心路は並行的伝導路 (末梢から一次感覚野まで) と離散的伝導路 (一次感覚野以降) に区別できる。聴覚経路においては, 聴性脳幹反応に現れる並行的伝導路の障害が聴覚野における補償的過活動を惹起すると考えられる。聴覚ミスマッチ磁場・陰性電位の知見は, 離散的伝導路における左半球の伝達障害が聴覚過敏に寄与することを示唆する。Highly sensitive personの理論では環境への敏感さが大脳右半球の活性に基づくとする。類推すると, ASDで生じるSPDには並行的伝導路の過活動に加え, 半球間で非対称な離散的伝導路の活動が寄与すると考えられる。