2023 年 51 巻 2 号 p. 73-77
自閉スペクトラム症 (ASD) の社会性障害について, 顔認知を中心に研究されてきた。近年のメタ分析ではASDにおいて顔特異的N170の潜時が遅延することが一貫して示されており, アメリカやEU圏でバイオマーカー候補として注目を集めている。N170潜時はASDの診断に有用な可能性がある一方, SSTや応用行動分析による心理療法による介入への応答性は一貫していない。N170の加算回数によるSN比の課題から, 定常視覚誘発電位をバイオマーカー候補として提唱する研究もある。また表情変化観察時に生じるN170増強や社会的文脈から逸脱する表情に対し惹起するN400といったASDの社会性障害に感度のあるERP成分も報告されている。それぞれのERP成分がバイオマーカーとしてどのような性質をもっているか, 刺激や課題, アウトカム等を精査する必要がある。