抄録
質量分析法と周辺技術の著しい進歩が見られ、その臨床応用が期待されている。我々はSELDI-QqTOF-MS法(1)、ICAT法、独自に開発した2DICAL(2-Dimensional Image Converted Analysis of LC-MS)法(2)による大規模なタンパク質発現解析、免疫沈降法と質量分析によるタンパク質複合体の解明によって、がんの発生、浸潤・転移などの病態の分子機構解明、がんの早期診断・個別化治療のための病態診断に有用なバイオマーカーの開発などを目的に研究を行っている。
第3次対がん総合戦略「がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発」の研究班では、早期診断の困難な膵がん患者を病期I期の早期症例を含め検出可能な新規血漿腫瘍マーカーを開発し、がん検診に応用可能性があることを示した。
本年度よりは遠隔地を含めた多施設から、同一の方法で検体を収集し、大規模な共同研究による再現性の検証を行う計画である。また診断の実用化のためにはコストダウンや質量分析機の定量再現性やスループットを改良が必要がある。本パネルディスカッションではこのような質量分析を用いた新たなバイオマーカー開発とその臨床応用への要件などについても討論したい。
Honda et al., Possible detection of pancreatic cancer by plasma protein profiling.
Cancer Res. 2005 Nov 15;65(22):10613-22.
Ono et al., Label-free quantitative proteomics using large peptide data sets generated by nano-flow liquid chromatography and mass spectrometry.
Mol Cell Proteomics. 2006 Mar 21; [Epub ahead of print]