日本臨床プロテオーム研究会要旨集
第2回日本臨床プロテオーム研究会
セッションID: Symposium-5
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シンポジウム
病理から見たプロテオミクス研究 (パネルディスカッション)
*坂元 亨宇
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抄録
癌の病理診断は、多段階発癌の初期像を捉え正確に診断することや、必要最小限の治療を裏付ける診断、新しい治療法の有効性の診断など、個別化においても重要な役割を担っている。そして、より最適な診断・治療が求められる中で、病態をより正確に表す分子マーカーの探索が、病理材料を用いて進められている。既に広く普及しているDNAマイクロアレイによる解析では、病理医が直接扱う病理材料の病変部において、約4万個といわれるヒトの遺伝子の内どの遺伝子がどれだけ発現しているかを解析することが可能となり、量的な制約が多い病理材料で限られた数の遺伝子の解析しかできなかった時代からは考えられないスピードで、悪性度などの病理像を規定する遺伝子、予後を予測する遺伝子、治療選択に直結する遺伝子などが同定されつつある。我々もこれまで、様々な癌の病理材料を対象に解析を行ってきたが、この過程で直面する問題として、マイクロアレイでリストアップされた遺伝子について、その蛋白の対象組織・細胞での局在を解析することなくして、当該分子の有用性の評価は困難であるということである。逆に、保存されたパラフィン標本での免疫組織染色が可能な抗体が得られる場合は、臨床的有用性の評価を含めた検索が可能となる。その点からは、病理材料の解析においては、組織染色可能な抗体の網羅性が望まれる。また、DNAマイクロアレイに対してより直接的に蛋白の発現を網羅的に解析するプロテオーム解析の病理材料への応用は、分子マーカーの同定をより加速すると期待する。さらには、癌組織における細胞間相互作用など、複雑な病理像を解明するためには、量的な情報に加えて、リン酸化などの修飾の違いや蛋白間の相互作用に関する情報が網羅的に得られることが望まれる。そしてこれらの成果は、診断への応用のみならず、阻害剤等を用いた分子標的治療の開発にも寄与するものと考える。
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© 2006 日本臨床プロテオーム研究会
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