25歳男性。小児期より蛋白尿があり,他院で腎生検を施行(10歳時),Ⅳ型コラーゲンα5鎖陰性,感音性難聴,家族歴よりX染色体優性遺伝Alport症候群として加療された。24歳時に血液透析となり,実父をドナーとする生体腎移植を施行した。ドナーは変形を伴う血尿があり,術前に腎生検を施行した。光顕所見とⅣ型コラーゲンα5鎖染色パターンは正常で,電顕で部分的糸球体基底膜菲薄化を認めたが,菲薄基底膜腎症としては非典型的と考え,ドナー適正と判断した。移植後ドナー・レシピエントの腎機能は良好に経過したが,後日,他院で施行されたレシピエント10歳時腎生検を評価でき,Ⅳ型コラーゲンα5鎖染色はボウマン囊基底膜にのみ陽性であったことから常染色体劣性遺伝Alport症候群が疑われた。COL4A3/4遺伝子検査において,COL4A4に複数の遺伝子多型を同定したが,既報は含まれず,確定診断には至らなかった。本例は遺伝性腎疾患の術前ドナー選定を考える上で示唆に富む症例で,文献的考察を加え報告する。