映画研究
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日本占領下の上海における日中合作映画の製作経緯
『狼火は上海に揚る』を中心に
朱 芸綺
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2020 年 15 巻 p. 52-73

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抄録
太平洋戦争開戦がもたらした政策の転換によって、日本映画界では日中両国の提携による合作映画が要請されることになった。1942年から1944年にかけて、日本国内の三大映画製作会社は、相前後して日本占領下の上海へ渡り、合作映画の道を模索していたが、最終的に実現できたのは『狼火は上海に揚る』一作だけであった。本稿はこの戦時中における日中合作映画の製作経緯を解明するものである。本稿では、日中映画合作の背景を確認した上で、三社の企画の遂行過程を整理し、中国側にとって複雑な政治情勢から直接取材する現代劇よりも解釈の幅が広い時代劇が受け入れやすいことと、監督主体で企画を具体化していく方法に限界があったことを指摘した。さらに、唯一映画化を実現した『狼火は上海に揚る』の映像の中からは、日本の「国策」に順応する姿勢を示しつつも、固有の文化的文脈を利用した中国側の主体性を読み取ることができることを明らかにした。
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© 2020 日本映画学会
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