日本CT技術学会雑誌
Online ISSN : 2434-2750
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原著
低エネルギー仮想単色X 線CT 画像におけるヨードおよび軟部組織等価物質の画質評価:contrast-to-noise ratio とdetectability index による比較
藤本 一真川嶋 広貴市川 勝弘蕪 俊二日髙 信輔
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2021 年 9 巻 1 号 p. 11-

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抄録

重要な要点

1) 低エネルギー仮想単色X 線CT 画像の優位性は,画像ノイズの増加による画質劣化以上に,コントラストの増強効果が得られた場合にあり,ヨードを対象とした場合に画質は改善されるが,軟部組織では劣化する.

2) 40 keV の画像は,大幅にヨードのCT 値を増強することができるが,低周波ノイズの増加が顕著となる.

3) 低エネルギー仮想単色X 線CT 画像の画質評価には,単純なCNR の計測よりも,周波数特性を加味したdetectability index の方が臨床と一致した結果が得られやすい.


要旨

[目的] 低エネルギー仮想単色X 線CT 画像(低keV 画像)の優位性を検証するため,ヨードおよび軟部組織等価物質の画質特性を評価すること.

[方法] 22 cm 径の水ファントム内に,2 mg/mL のヨード含有ロッドおよび軟部組織等価ロッドをそれぞれ配置した.このファントムを高速スイッチング方式のdual energy 撮影モードを用いて,CTDIvol =7.9 mGy でスキャンし,仮想単色X 線CT 画像 (40,50,60,および70 keV) を生成した.得られた画像から各ロッドファントムのcontrast-to-noise ratio (CNR) を測定した.さらに,task transfer function (TTF) とnoise power spectrum (NPS) を測定し,5 mm 径の造影,非造影の腫瘍を想定した場合のdetectability index (d’) を推定した.

[結果] ヨードのCNR は,エネルギーが低くなるほど増加したが,軟部組織では大幅に低下した.低keV 画像のTTF は70 keV とほぼ同等であったが,NPS はエネルギーが低下するほど大幅に増加し,特に低周波領域での増加が顕著であった.d’値は,CNR と似た傾向を示したが,造影を想定した場合に40 keV と50 keV の結果は同程度となった.

[結論] 低keV 画像の優位性は,CNR の結果どおり,画像ノイズの増加よりもコントラスト増強効果が得られた場合にある.しかしながら,CNR 測定では,周波数特性が含まれず,低周波ノイズに起因する画質劣化を評価することができない.d’の結果より,ヨードの画質改善は,40 keV と50 keV では同程度であり,より低周波ノイズの少ない50 keV の方が優れた画像を提供できる可能性がある.

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