2022 年 6 巻 s2 号 p. s86-s90
放送局がアーカイブとして保存する放送済みの番組の大半が「死蔵」状態にある。また、ICT活用が進む教育現場からは、放送アーカイブの授業での活用を望む声が多い。このため本稿では、著作権法に新たな権利制限規定を設ける私案を設定し、検討する。著作権法35条と授業目的公衆送信補償金制度に基づき、31条3項の国会図書館による「絶版等資料」の公衆送信の規定と運用を参照しながら、市場に流通していない放送アーカイブをアウトオブコマース(OoC)と仮定し、各番組に関わる権利者の許諾なく、授業等での利用に限定した配信を行えるという私案である。「死蔵」状態の放送アーカイブは事実上、OoCの定義に適い、私案はスリーステップテストにも適合することを確認した。私案の実現によって期待される効果と求められる取り組み、また、拡大集中許諾制度などの可能性と課題を示した。