2024 年 8 巻 3 号 p. 124-128
本稿では、コプト語の機械翻訳システムの性能比較と、言語復興におけるその役割について考察する。まず、代表的な機械翻訳システムであるCoptic Translator、Claude 3 Opus、GPT-4oの性能を評価し、Claude 3 OpusとCoptic Translatorが高い翻訳品質を達成していることを明らかにする。次に、コプト語復興の歴史を振り返り、個人の情熱と学術・宗教コミュニティの支援が運動を支えてきたことを指摘する。その上で、機械翻訳がコプト語の学習リソース拡充やデジタルアーカイブ化、コプト語版Wikipedia等を通じた情報発信に寄与する可能性を論じる。ただし、技術の負の側面への倫理的配慮や、人間の営みを代替するものではないことにも留意が必要である。コプト語の真の復興のためには、話者自身が言語の価値と可能性を体現していくことが何より肝要であり、機械翻訳はそのための補助的ツールと位置づけるべきだと結論づける。