2024 年 8 巻 s2 号 p. s39-s42
本報告は、レコーズ・イン・コンテクスツ(RiC: Records in Contexts)の実装を試行した結果について論じるとともに、そこから浮かび上がった課題を提示する。まず、RiCの概要を振り返った上で、その実装に向けて先進的な取り組みを見せるフランス国立公文書館(ANF: Archives nationales de France)がRiCに着手した背景について取り上げる。その理由は、この背景から、ISAD(G)など既存の国際記述標準が実務においても不具合を起こしていることが理解できるためである。続いて、ANFが開発したRiC-O Converterの機能を瞥見した後、既存の国際記述標準に準拠して開発されたオープンソースの検索ソフトウェアであるAtoM(Access to Memory)とRiC-O Converterを併用し、RiC準拠のデータセットを用意する方法について説明する。さらに、そのデータセットが、グラフデータベースであるGraphDBによって、どのように視覚化できるかを示す。以上の検討を踏まえ、RiC実装の実現に向け、アーキビストが何を準備しておくべきかを提起する。