デジタルアーカイブ学会誌
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8 巻, s2 号
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第9回研究大会(2024年11月1日~2日)予稿
一般研究発表
セッションA1
  • 宮崎 一貴, 友田 成彦, 竹内 裕希子
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s35-s38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    災害の保存や継承を目的として、災害デジタルアーカイブの構築が行われている。近年、機械学習を用いた研究が多く行われており、被災状況の判定等の活用がなされている。一方で、アーカイブ構築に特化したモデルの構築事例は見当たらない。本論では、災害アーカイブ構築のコスト削減を目指し、画像分類手法を用いたモデルの適用を行う。その分類精度から災害アーカイブにおける適用可能性について議論を行う。ひのくに災史録の災害写真を用いてVGG16モデルを構築した。その結果、モデルの精度は72%程度であった。建物や熊本城などの特徴のある項目では正しく分類されやすく、水辺等の重複する要素を持つ画像の分類が難しいと考えられる。人間と比較すると判別モデルの精度が低い。一方、予測にかかる時間の削減や属人性を排除できる観点からアーカイブ構築作業の効率化が期待できるだろう。

  • 橋本 陽, 元 ナミ
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s39-s42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告は、レコーズ・イン・コンテクスツ(RiC: Records in Contexts)の実装を試行した結果について論じるとともに、そこから浮かび上がった課題を提示する。まず、RiCの概要を振り返った上で、その実装に向けて先進的な取り組みを見せるフランス国立公文書館(ANF: Archives nationales de France)がRiCに着手した背景について取り上げる。その理由は、この背景から、ISAD(G)など既存の国際記述標準が実務においても不具合を起こしていることが理解できるためである。続いて、ANFが開発したRiC-O Converterの機能を瞥見した後、既存の国際記述標準に準拠して開発されたオープンソースの検索ソフトウェアであるAtoM(Access to Memory)とRiC-O Converterを併用し、RiC準拠のデータセットを用意する方法について説明する。さらに、そのデータセットが、グラフデータベースであるGraphDBによって、どのように視覚化できるかを示す。以上の検討を踏まえ、RiC実装の実現に向け、アーキビストが何を準備しておくべきかを提起する。

  • 藤野 朝咲, 渡邉 英徳
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s43-s46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿の目的はOpen Source Intelligence(OSINT)活動の初期参加および継続参加の動機を明らかにすることである。そのために、2022年2月以降のウクライナ侵攻に関心を持ち、主にXを用いて活動する6名を対象とした半構造化インタビュー調査と質問紙調査を行ない、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)の手法を用いて分析する。その結果、活動の特徴、構造、動機、阻害理由を表す28概念が生成された。これより、初期参加の動機の概念として「社会と自分の一続き感」「弔いの手段」「外伝的な探り当てのゲーム感」「自己効力感」の4概念が明らかになった。一方で継続参加の動機は「社会課題に対する効用感」「社会的証明による認められ感」「パズル的な面白さ」「関心・発想の強化」の4概念が生成された。またデータへの意味付与を行なう情報化のプロセスと情報共有のコミュニケーションの2つが循環し、後者を通じて初期の参加時とは異なる動機が生じ、継続意向に繋がることが確認された。今後、このコミュニケーションを詳細に分析することでOSINT活動の持続性の検討に寄与することが期待される。

セッションB1
  • 小森 一輝
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s47-s50
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、古典籍などのデジタルアーカイブを学校の教科教育で利活用する方途を考究し、その方途に基づいた授業実践を行い、その成果と課題を検証することである。その一環として、NHKの教育番組のうち、日本史・古典・書道におけるメディアの利活用状況を分析し、教科教育に適したコンテンツの種類や利活用の方法を考察した。その結果、日本史・古典・書道では人物の肖像や絵図の汎用性が高いと判断した。その結果を踏まえ、高等学校国語科「古典探求」において人物を含む絵画資料を用いた『平家物語』の授業実践を考案した。

  • 菅原 然子
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s51-s54
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、ある私立学校が構築・開設したデジタルアーカイブを、自校史教育で利活用する方法と有効性について論じる。1921年創立の自由学園は2021年、創立100周年を機に、書籍版の年史の出版と、資料公開を主な目的としたデジタルアーカイブ「自由学園100年+」(DA)の開設を行った。DAの安定的な運用のためには、利活用の促進が欠かせない。そこで2023年度より中学、高校の自校史教育の授業内でのDAの活用を模索し始めた。自組織の構成員にその内容を積極的に還元することで、運用面における安定性も維持できる。そのためにはアーキビストがDA と利用者の間に入り、適切にガイドをし、また改善していく役割を担うことが必要となる。一私立学校の事例ではあるが、学校だけにとどまらず、小組織にも応用可能な利活用の方向性であると考える。

  • 飯塚 重善, 武藤 幸一
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s55-s58
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、ICTの進展を背景に注目されるデジタルアーカイブについて、横浜市みなとみらい地区での取り組みを報告する。地域の小学校におけるSDGs/ESG活動を記録する地図機能付きデータベースプラットフォームの構築を中心に、システムの試作と今後の展開を検討した。試作システムでは、投稿、承認、公開の3機能を実装し、まずは、2023年度以前の活動内容をアーカイブする。今後の課題として、生徒による投稿、自作地図の組み込み、UIとアクセシビリティの向上、コンテンツ管理、地域連携、持続可能な運用モデルの構築を挙げた。“これからの活動を蓄積”するアプローチは、アーカイブを未来志向の動的プラットフォームへと進化させ、新たな価値創造の可能性を示唆している。

  • 大井 将生, 大野 健人
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s59-s62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    昨今、高等教育・研究機関では、デジタル・ヒューマニティーズ(DH)への注目が高まり、新しいカリキュラムも各地で開設されている。一方、中等教育では文理融合型の探究学習が重要であることが提言されているものの、その方法論に関する検討や実践の蓄積が十分に為されておらず、既存の文系/理系の枠から抜け出せないという課題がある。そこで本研究は、DHを中等教育に拡張するための学習モデルを開発することを目的とする。そのために、文系生徒の「問い」を情報学的な手法で深めることを支援するプログラムを埋め込んだ、ゼミ形式の探究学習モデルを開発する。また、開発した文理融合型の学習モデルを用いて、中等教育学校において年度を通して中⾧期的な授業実践を行う。発表では、結果として得られた生徒の学びの進展や、その分析について述べる。本研究の成果により、人文情報学が持つ可能性を中等教育に拡張するとともに、生徒たちの「問い」に即した文理融合型の探究学習を支援することに貢献する。

セッションC1
  • 李 雪貞
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s63-s66
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    図書館の書架配架は目録分類法の更新と書籍の入れ替えにより変化している。目録分類法の改訂は学問や知識の発展により影響を受ける。書籍の入れ替え、すなわち利用ニーズが高そうなほんと低そうな本の選定は、当時の流行やブームにより影響を受ける。それにより、書架の配架の変化を通じて、知識や学問の発展と流行の変化がわかる。故に、本発表は過去年度の配架様子を再現できる「動的」な書架を提案する。貸出回数により輝度を調整する拡張機能を備える。それにより、学問の変化や過去の出来事や世相を直間的に把握することができると考えられる。特に学問の栄枯盛衰を表象化することで、知識の遡源のハードルが下がり、一般利用者でも断片的な情報の文脈を把握できる。

  • 仲丸 有紗
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s67-s70
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタル文化遺産の登場がアーカイブのありかたを変えている。デジタルデータは更新され続ける「プロセス」であるため、従来のように「保存」することはできないが、「サンプリング」によってアーカイブすることは可能である。この方法においては、何を文化遺産としてアーカイブするかという価値づけと選択の問題に、明らかに機械が介在している。いま、私たちは機械によってアーカイブされたものを文化遺産とみなすという状況にあり、これはデジタルアーカイブのアフォーダンスとして解釈することができる。この視点は、伝統的なアーカイブの管理者や為政者が、アーカイブ自体によってどのように影響されてきたかという新たな問いを提示する。私たちは文化遺産を、〈権力〉をもつ人間だけでなく、技術や物質、環境といった非人間的な要素の組み合わせで生み出されるものとして再考すべきである。

  • 城所 岩生
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s71-s74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    ベルヌ条約(1886年)は著作権の発生に登録などの様式行為を必要としない無方式主義を採用。1889年に加盟した日本は取引の安全性を確保するために登録制度が設けられているが、プログラムの著作物を除いては著作物を創作するだけでは登録はできない。1989年に加盟するまで長らく方式主義を採用したアメリカは、加盟するための著作権法改正で登録は著作権発生の要件ではなくしたが、訴訟提起の要件とするなど登録を奨励した。生成AI時代を迎えて、AIを使用したことを記載しない登録申請も出されたりしたことから、著作権局は「AI生成によって生成された素材を含む作品の著作権登録ガイダンス」を公表した。生成AIを利用した著作物が大量に発生し、著作権をめぐる取引も活発化するデジタル・AI時代を迎えて、登録制度の必要性はますます高まっていることから、日本でも登録制度を早急に整備すべきである。

  • 谷島 貫太
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s75-s78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    資料へのアクセス可能性は、メタデータによって秩序化されている。その秩序をよりよく理解することが、より効率よく資料にアクセスするための条件だった。しかしこの条件は今後大きく変わる可能性がある。生成AIベースの対話型インターフェースは、資料へのアクセス可能性の根本的な原則を変容させるポテンシャルを有している。人間がデジタルアーカイブに合わせるのではなく、デジタルアーカイブが人間に合わせるようになる、というモデルがすでにリアリティを持っている。そのときには、資料へのアクセス可能性を担保するものとしてのメタデータという枠組み自体が再考を迫られる。本発表ではこのような事態を捉えるための足場として、レコード・コンティニュアム理論における「痕跡」概念を発展させることを試みる。その参照元となっている哲学者ジャック・デリダの議論に遡るとともに、ポストメタデータ時代の基本概念として「痕跡」を位置付ける。

セッションD1
セッションE1
セッションA2
  • 増田 知子, 佐野 智也
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s103-s106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    帝国議会の「議事速記録」は、「官報号外」(内閣印刷局発行)で公表されており、議会史の最重要基本資料である。これをDB 化したのが、国立国会図書館の「帝国議会会議録検索システム」である。これに報告者の研究グループが作成した「法令DB」、「人事興信録DB」[1]を併用することで、法案を付託された専門性のある委員会で争点化した条文に焦点を当て、代表制における政治的妥協・取引が法律の制定改廃にどのように収斂したのかを説明できると考える。事例として、第51回帝国議会(大正14・1925年12月~15年3月)で審議された労働組合法・労働争議調停法・治安警察法・暴力行為等処罰法を取り上げ検討する。

  • 阿部 昭博, 渋谷 洋祐
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s107-s110
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    令和4年度博物館法の改正に伴い、博物館の新たな役割として、博物館資料のデジタルアーカイブ化や地域の多様な主体との連携・協力による文化観光など地域の価値創出への寄与が明記された。これら博物館を取り巻く動向を念頭に置きつつ、本研究では江戸期の北上川舟運を対象として、公立博物館と大学の連携のもと時空間データベースの構築法と地域での様々な活用方法を明らかにし、地域史としての舟運の解明と継承に資することを目的とした取組みを行ってきた。本稿では、北上川舟運データベース構築の取組みとその地域での活用検討から得られた知見について、博学連携の視点から考察を試みる。

  • 木村 文
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s111-s114
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年初頭から全世界的に広まった新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、世界各地の博物館は活動を制限された。対面で活動できなくなった分、デジタル技術を活用したオンラインのコミュニケーションを増加させたと言われている。しかし、実際にどの程度の増減があったのかについては、先行研究では明らかになっていない。そこで本稿では、リトアニア共和国におけるデジタル化の事例をもとに、統計データから博物館においてパンデミックを機にデジタル技術の活用が増えたのかを検証した。リトアニア文化省の公表する博物館の統計データのうち、2018年から2023年分の「年間のデジタル化された文化財の点数」のデータを用いて、デジタル化が行われた点数の推移を検証した。合計値と中央値を算出し、グラフと表を作成して、推移の検証を行なった。分析の結果、全体としては大幅な増減は見られなかったものの、規模の大きな博物館以外によるデジタル化数の底上げがパンデミックによって起こったと考えられる。

  • 田口 智子, 倪 雪, 酒井 絵美
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s115-s118
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、国内外で美術、音楽、演劇、舞踊といった芸術資源を対象としたデジタルアーカイブが構築され、様々な分野で利活用が進んでいる。しかし、アーティストを対象とした研究はまだ報告がわずかであり、アーティストによるデジタルアーカイブの活用方法や問題点などについては不明な点が多い。そこで本発表では、アーティストの創作に適したデジタルアーカイブについて検討することを目的に、先行研究において指摘されている課題を整理するとともに、東京藝術大学未来創造継承センターにて実施している芸術資源活用プロジェクト公募について紹介する。さらに、演奏家である発表者(酒井)が、当事者の視点からアーティストが創作に用いる際にデジタルアーカイブに求められる要素について考察を行った。これらの課題を踏まえ、様々なアーティストの個別事例の収集・蓄積を行うことにより、創作に適したデジタルアーカイブの構築が可能となると考えられる。

セッションB2
セッションC2
  • 松本 淳
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s131-s133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタル化が進むアニメの制作工程において、CG(コンピュータグラフィックス)は欠かせない技術となっている。筆者は科学研究費助成事業基盤研究(B)『「アニメ中間素材」の分析・保存・活用モデルケースの学際的研究』に参加しており、新潟大学アニメ・アーカイブ研究センター(ACASiN)が2016年に構築した「アニメ中間素材オンライン・データベース(AIMDB)」をアニメ制作に携わる実務家に試用してもらい、その有用性や課題について取材を行った[1]が、紙に鉛筆で描画する作業が起点となる作画アニメーションに対して、全てがデジタルデータとして構築されるCGのアーカイブについての先行研究は少ないことから、10年ぶりに続編が制作される『楽園追放心のレゾナンス』がどのように前作のデータを活用しており、アーカイブに関してどのような可能性や課題があるのかを制作に携わる実務家に聞いた。

  • 藤岡 洋
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s134-s137
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    アナログフィルムで記録された動的映像(以下、映像)は時に内容の冗長性から、資料化がメディア単位にとどまり内容まで踏み込むことが難しい。そこで物理的にフィルムに残された映像の最小単位:ショットを部分映像へのアクセス経路として確保し、複数のショットを意味的単位:シーンとして措定することで、冗長な記録映像を資料化する試み(ショット単位分析、仮称)を行ってきた。シーンを措定する過程では、映像が写真など他種資料を引き寄せ、分析・検証する他分野研究者の間での闊達な議論を促される。また最近になって、この分析が参加した研究者自身の研究に還元されていく小さな例も見られるようになってきた。本発表は映像資料化の方法論を簡単に説明した上で、シーン措定の途上での資料と研究者との間に起きた事例をいくつか紹介し、アーカイブ構築過程(アーカイヴィング)そのものの意義について考える。

  • 鈴木 千佳
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s138-s141
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    スポーツであるとともにアートであり選手にアイドル的な注目も集まるフィギュアスケートにおいて、その魅力をファンがどのように捉えているかを知り、デジタルアーカイブの利活用を促進するための工夫に役立てることは豊かなフィギュアスケート文化の醸成に有用と考えられる。

    本研究はテレビ東京のTwitter投稿企画に応募して公開されたファンの言葉を計量テキスト分析ツールKH Coderを用いて分析・可視化した。その結果、ファンはスケーターの技術の評価やプログラムの理解に必要な知識を有し、他のスポーツファンやアイドルファンとも通じる視点で観戦・鑑賞しており、言葉にはスケーターごとの特徴が見られた。現地の熱狂や選手の表情・言動、演出や照明を活写する言葉は、利用者を惹きつけるキーワードとして利用が可能である。

  • 阪田 裕規, 木戸 崇之
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s142-s145
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表では、エー・ビー・シー リブラが保有する1960年代から80年代にかけて制作されたテレビ番組アーカイブの公開と利活用の取り組みについて報告する。これらの番組は、全国各地の観光名所や料理、歴史、芸術など多岐にわたるテーマを扱い、昭和の貴重な映像資料となっている。公開に向けては、まず「ABCリブラフィルムアーカイブ=ALFA」としてリストをホームページに掲載し、YouTubeやSNSで短尺のダイジェスト動画を順次公開した。また、著作権や肖像権の確認・処理を行い、関係機関や施設からの許諾を得た上で映像を公開している。さらに、放送番組センターとの関係やパブリシティ権・肖像権の問題に対しても慎重に対応している。本発表では、これらの取り組みを通じて得られた利活用の可能性と課題について詳述し、民間企業がアーカイブを公開する際の指針を示す。

セッションD2
  • 全 炳徳
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s146-s149
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    第二次世界大戦中,B-29スーパーフォートレスを改造して作った写真偵察機F-13が初めて長崎の上空に現れたのは1945年3月9日のことである。長崎に原爆が落とされた日からちょうど5ヶ月前のことで,極秘・写真偵察機による長崎ミッションの始まりを告げるものだった。その約1ヶ月半後の4月28日,科学者と軍の代表が率いる原子爆弾・マンハッタン計画の第1回目の目標選定委員会が開かれた[1]。その委員会の机上に,長崎と佐世保を含む17都市の目標都市がリストアップされた。その約6ヶ月後の9月7日,写真偵察機F-13が再び長崎の上空に姿を見せた。長崎上空での偵察ミッションを終える日であった。米軍の写真偵察機F-13による長崎上空での偵察ミッションは凡そ6ヶ月間に及び,合計27回のミッション記録がある[5]。その内,アメリカのメリーランド州のカレッジパークにある国立公文書館には18回のミッションデータが保管されている。全部で1690枚余りの長崎上空での写真記録データは全てネガフィルムを保管するために作られた特殊フィルム缶(ICE CUBE,アイスキューブと呼ぶ)に収められている[2]。本論ではこれら6ヶ月間の記録をリスト化して画像情報を整理・報告するとともに,Web-GISシステム上にデータを公開するためのシステム設計内容を述べる。本報告の内容には写真偵察機F-13に装備された6台の特殊カメラの配置場所及びカメラの機能性,また,そのカメラが捉えた正斜写真及び傾斜写真などに付されたヘッダー情報の内容が説明されている。

  • 吉水 彩, 木戸 崇之, 屋納 勇治, 橋本 沙織
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s150-s152
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表は、朝日放送グループホールディングスが1970年の大阪万博に関連する取材映像をデジタルアーカイブ化し、社内提案を経て公開に至るまでの過程について述べたものである。2022年4月に「EXPO'70映像アーカイブ」をウェブサイト上に立ち上げ、Google Map上で万博公園の場所をピンで示し、そこからパビリオンの映像が閲覧できるようにした。公開にあったては、映像の著作権処理や肖像権の問題をクリアしたが、特にパビリオン内部の権利確認作業では多くの課題が生じた。これらの課題や、映像公開を通じて得られた成果について報告する。

  • 髙橋 彰, 北本 朝展, 矢野 桂司
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s153-s156
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    カメラアプリ「メモリーグラフ(メモグラ)」は、同一構図撮影を支援し、過去の写真と現在の風景を比較撮影できる機能を持ち、景観変化の把握と関心喚起に効果がある。より幅広いユーザーが景観学習に活用できるよう、メモグラの機能を拡張し、新たにメモグラ・プラットフォームを構築した。このプラットフォームは、共有プロジェクト(画像群)管理用のメモグラ・マネージャ、画像撮影用のメモグラ・アプリ、画像共有用のメモグラ・ビューアから構成される。マネージャは一般ユーザーによる共有プロジェクト登録を簡易化し、アプリは現地撮影を支援し、ビューアは結果の共有と閲覧を担う。これにより、イベントの企画から実施、振り返りまでを一貫してサポートできる。本稿では、このプラットフォームを紹介するとともに、その有効性を検証するため、大学生主導の景観学習イベントの実践について報告する。

  • 小出 治都子, 尾鼻 崇
    2024 年 8 巻 s2 号 p. s157-s160
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、ビデオゲーム機、ビデオゲームソフトなどの実物資料や関連資料を展示する「ゲーム展」が国内外のミュージアムで開催される機会が増えている。このような展示の増加は、ゲームアーカイブに関する研究と実践に大きく関わっている。本発表は、ゲーム展示の事例を紹介し、その際に浮彫となったゲームの現物保存やデータベースに関する課題や可能性について考察した。ゲーム展示は来館者にとって親しみやすいテーマであると同時に、来館者の経験にも大きく左右されるテーマでもある。だが、ゲームを保存する国内のミュージアムの数は少ない。ゲーム作品にはさまざまなバリエーションがあり、その識別には専門的な知識が必要とする。しかし、ゲームの現物保存の増加やデータベース化が進めば、ミュージアムのゲームの保存率の向上や利活用の促進が予想され、ゲーム展示の課題が一つ解決できると考えられる。

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