2024 年 8 巻 s2 号 p. s67-s70
デジタル文化遺産の登場がアーカイブのありかたを変えている。デジタルデータは更新され続ける「プロセス」であるため、従来のように「保存」することはできないが、「サンプリング」によってアーカイブすることは可能である。この方法においては、何を文化遺産としてアーカイブするかという価値づけと選択の問題に、明らかに機械が介在している。いま、私たちは機械によってアーカイブされたものを文化遺産とみなすという状況にあり、これはデジタルアーカイブのアフォーダンスとして解釈することができる。この視点は、伝統的なアーカイブの管理者や為政者が、アーカイブ自体によってどのように影響されてきたかという新たな問いを提示する。私たちは文化遺産を、〈権力〉をもつ人間だけでなく、技術や物質、環境といった非人間的な要素の組み合わせで生み出されるものとして再考すべきである。