2025 年 9 巻 s1 号 p. s17-s20
大都市圏へ資源の集中により地方の縮小が止まらない今日、地域にある小規模な映画資料館が所蔵するノンフィルム資料のデジタルアーカイブの構築が、ますます問題視されるようになった。地方都市に位置する小規模の館には、限られた事業予算や専門職スタッフの不在といった「ハード面」の課題だけでなく、それらの施設を設立する地方自治体がアーカイブの重要性を十分に認識していない場合も少なくない。
筆者が5年間に在籍していた静岡県浜松市にある木下惠介記念館では、2023年~2024年の2年間に、国立映画アーカイブ主催「アーカイブ中核拠点形成モデル事業」の一環として、同館所蔵の映画脚本の一部がデジタル化できた。しかし、その構築のプロセスでは大規模な館では経験しないような課題が次々と出てきた。
本報告では、木下惠介記念館の映画脚本デジタルアーカイブを事例にして、地域の映画資料館におけるデジタルアーカイブ構築の現状と課題を明らかにする。