2025 年 9 巻 s2 号 p. s134-s137
近年注目される「超文化的記憶」研究では、地理的・文化的境界を超えた記憶の広がりの把握が課題とされる。本研究は、全米日系人博物館が運営する世界の日系人交流サイト兼デジタルアーカイブ「ディスカバー・ニッケイ」を対象に、コンテンツ分析と運営者へのインタビューを通じてその形成過程を検討する。分析の結果、資金面の要請やブランディング戦略などの実務的条件が、グローバルかつコミュニティ志向のデジタルアーカイブ形成を方向づけてきたことが確認された。他方で、コンテンツ分析ではユーザーがローカルかつ私的な記憶を重視する傾向が示されたが、その傾向もまた運営者自身の方針にも沿うものであることが明らかになった。本発表は、超文化的記憶の広がりを言説と実務の両面から検討する際、デジタルアーカイブがその理論深化の場となる可能性を提示する。