抄録
ダムにおける試験湛水は, 堤体や貯水池の安全確認のために実施される。しかし, 近年その長期化によってダムの効用発揮が遅れることが問題となっている。長期化の要因は, 流入量が少ないことが第一であるが, 試験湛水が複数年となる場合は洪水期における洪水対策容量の設定も関係する。本論文では, 試験湛水時の水位上昇に対する安全性について検討を行い, 所定の安全確率を確保するための洪水対策容量と洪水期経験回数, 許容水位上昇の関係を整理した。また, モデルダムについて, 対策容量の対象となる洪水の確率年および洪水期経験回数の算定を行い, 具体的に検討した。