2024 年 43 巻 3 号 p. 135-138
策定された背景と経緯
現在,超高齢化が進む中,高度顎堤吸収や顎堤形態不正,菲薄な粘膜などを有する症例が増加し,硬質材料の義歯床では咀嚼時の疼痛を回避できない症例が増加している.日本補綴歯科学会では2007年に「リラインとリベースのガイドライン2007」(以下,2007年版)を策定し,日本歯科医学会収載ガイドラインとして広く歯科医療関係者に公開してきた.2007年版が公開される前は,リベースの指針といえるものは存在するものの,格段に使用頻度が高いリラインのガイドラインは作成されていないこと,臨床で広く用いられているリライニング直接法に関する記述がないこと,材料の進歩に伴い開発・市販された軟質材の記述がないことなどが問題点として挙げられていた.そのため2007年版は,その当時の科学論文の検索から得られた限りのあるエビデンスと専門家のコンセンサスに基づいたガイドラインを作成したと序文に記載されており,その内容も軟質リライン材の記載が多くなされている.2016年には,「有床義歯内面適合法」に,「軟質材料を用いる場合」が追加された.日本補綴歯科学会は当時,「軟質裏装材による下顎総義歯の裏装の指針」を公開していたが,診療ガイドライン作成には至っていなかった.診療ガイドラインは,一般的には3〜5年ごとに改訂されるべきであると日本医療機能評価機構(以下,Minds)が提供する「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」1)には記載されている.これを踏まえて,2007年版公開から10年以上が経過した2017年に,新しい研究結果や臨床データを踏まえたガイドラインの改訂を行うこととなり,日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会で診療ガイドライン担当委員による改訂作業がはじまった.