2024 年 43 巻 3 号 p. 155-158
はじめに
部分安定化ジルコニア(以下,ジルコニア)は,優れた審美性を有し,セラミックスでありながら非常に高い靱性を兼ね備えていることから,近年歯科において広く臨床応用されている.アレルギーを引き起こさず,メタルフリーであるという観点からも,金属や硬組織の代替材料として期待されている.そのような状況の中,海外ではジルコニアがチタンに代わる新規インプラント体材料として市販され始めており,その動向が注目されている.ジルコニアインプラントシステムは,メタルフリー志向が強いヨーロッパを中心に販売が進んでおり,1回法インプラントが主流である.最近ではエンジニアリングプラスチックを併用することなどにより,スクリューにも金属を用いない2回法システムも臨床応用されている.また,インプラント体に対しては,各社独自の酸処理やサンドブラストなどの表面処理が行われている状況である.現在,ジルコニアインプラントの安全性や有効性,特にオッセオインテグレーションに関して様々な議論が交わされている.未だにその獲得の是非については不明な部分が多いが,適切な表面処理を施せばチタンと同等の骨接触が得られるという報告も散見される.しかしながら,ジルコニアは優れた特性を有している反面,それが機械加工などのインプラントへの表面処理を困難にしているという側面もある.図1に,サンドブラスト処理を行った純チタンおよびジルコニア表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す.ジルコニアに,純チタンと同一条件でアルミナサンドブラスト処理を行っても,同一の表面形状が得られないことが確認できる.すなわち,ジルコニアインプラントの表面に対しては,従来のチタンインプラントの表面に行ってきた表面改質法とは異なった方法を模索する必要があると考えられる.そこでわれわれは,加工方法としてレーザー加工に着目し,ジルコニアインプラントの確実なオッセオインテグレーション獲得を目指したジルコニア表面へのレーザー加工処理について検討した.本総説では,その一連の医工連携による取り組みについて紹介する 1〜4).