日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
高齢者における嚥下障害リスクに対するスクリーニングシステムに関する研究
深田 順子鎌倉 やよい万歳 登茂子北池 正
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2006 年 10 巻 1 号 p. 31-42

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抄録

本研究の目的は,高齢者における嚥下障害のリスクを一次スクリーニングするために嚥下障害リスク評価尺度を改訂することと,さらに二次スクリーニング検査も用いたスクリーニングするシステムを検討することであった.本研究は,愛知県立看護大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施された.高齢者2528名に対して,一次スクリーニングとして嚥下障害リスク評価尺度改訂版を調査し759名の有効回答を得た.そのうち協力が得られた71名に対し,二次スクリーニングとして反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,フードテストを,至適基準として嚥下造影検査を実施し,以下の結果を得た.

1.評価尺度改訂版は,再現性,項目分析などの検討の結果,23項目が選定された.因子分析により第1因子:咽頭期の嚥下障害,第2因子:誤嚥,第3因子:準備・口腔期の嚥下障害,第4因子:食道期の嚥下障害が抽出され,構成概念妥当性を確認した.尺度全体ではCronbach's α係数は0.92で,再テスト法による信頼性はr=0.85で信頼性を確認した.妥当性・信頼性は共に改訂前に比べ増加した.

2.嚥下造影検査を至適基準としたとき,評価尺度改訂版の合計得点のcut-off pointを6点とすると,敏感度は57.1%,特異度は56.0%であった.

3.一次・二次スクリーニング検査の結果と年齢,性別,嚥下に影響する疾患・薬物を独立変数とし,嚥下造影検査の結果を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.その結果,性別は有意に関係しオッズ比が12.2であった.性別と,オッズ比が高かった嚥下に影響する薬物・疾患,評価尺度改訂版,フードテストから求めた嚥下障害リスクの予測値は,嚥下造影検査による嚥下障害リスク有無の判定を76.1%予測できた.

以上から,性別,嚥下に影響する薬物・疾患,評価尺度改訂版,フードテストは,嚥下障害リスクをスクリーニングするシステムになる可能性が示唆された.

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© 2006 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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