日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
当院療養型病棟におけるIOC (間欠的口腔カテーテル栄養法) 5年間の取り組み
―PEGとの比較から―
重白 啓司原田 英昭清水 洋子岡尾 晃一長野 麻未
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2006 年 10 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

当院56床の療養型病棟における平成12年4月から,平成17年3月までの5年間のIOC (Intermittent Oral Catheterization feeding:間欠的口腔カテーテル栄養法) の取り組みをPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy) との比較から報告する.当院では原則持続的経鼻胃経管栄養法 (CNG) は施行しない.この5年間の当院における経管栄養法の内,IOCは43例,PEGは33例であった.IOC施行例 (以下IOC群と称す) の内7例 (16.3%) が3食経口摂取可能となり,2例が2食,3例がおやつならびに1食経口摂取可能 (IOCとの併用) となった.PEG施行例 (以下PEG群と称す) ではわずかに2例 (6.1%) においてのみ3食経口摂取可能となり,2食経口摂取可能となったのも1例で,おやつならびに1食経口摂取可能となった例も1例のみであった.一部でも経口摂取可能となる割合は,IOC群 (37.2%),PEG群 (12.1%) とIOC群のほうが有意に高かった.喀痰中のMRSA陽性の割合はIOC群17例 (39.5%),PEG群17例 (51.5%) とわずかにPEG群の方が高いが有意差はなかった.この5年間の死亡者数は,IOC群17名 (39.5%),PEG群22名 (66.7%) と有意にPEGの死亡率が高かった.死因として誤嚥性肺炎が原因の死亡者数はIOC群6例 (14.0%),PEG群13例 (39.4%) と有意にPEG群の方が高かった.死因としての肺炎を除外するとIOC,PEG両群の死亡率はほぼ同じであった.現在安易に胃瘻が造設されている.IOCとPEGを比較すると,IOCは安価ですぐれた経管栄養法であり,PEGを施行する前に是非一度試みるべき栄養法であると考える.

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© 2006 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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