2007 年 11 巻 1 号 p. 42-51
3歳から6歳の自閉症スペクトラム幼児(以下ASD児)123名と,保育園に在籍する定型発達幼児(以下一般児)131名の保護者に対し,食べ方の問題を「食事環境に関するもの」と,「食物処理に関するもの」に大別しアンケート調査を実施,年齢ごとに比較検討し,以下の結果を得た.
(1)食事環境に関して
6項目について調査した.3歳で60%近くのASD児に何らかの問題があり,4,5歳でやや増加し,6歳でも半数以上に問題がみられた.「じっと座っていられない」は年齢に関係なく半数以上にみられた.「いつもと違う場所だと食べない」,「いつもと違う人がいると食べない」,「食器が違うと食べない」3項目は療育により軽快する可能性があると考えられた.しかし「自宅あるいは通園でしか食べない」,「決まった時間に食べられない」ことは短期間では軽快しないと考えられた.
(2)食物処理に関して
7項目について調査した.年齢を問わず70から80%のASD児に問題がみられた.「スプーンやフォークがうまく使えない」がもっとも多く,一般児では皆無となる5,6歳以降も存続した.「口にいっぱい詰め込んでしまう」は年齢による減少はなく,「噛まずに飲み込む」,「口にためて飲み込まない」は年齢があがると却って増加しており,短期間では軽快しないと考えられた.「水分ばかり摂る」,「一度飲み込んだものを口に戻す」については,さらに検討が必要と考えられた.
(3)知的能力との関連について
知能障害がASD児の問題の発現に関係している可能性が考えられたのは,現段階では「食具がうまく使えない」の1項目であった.