日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
自閉症スペクトラム児の幼児期における摂食・嚥下の問題
第1報 食べ方に関する問題
篠崎 昌子川崎 葉子猪野 民子坂井 和子高橋 摩理向井 美惠
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 11 巻 1 号 p. 42-51

詳細
抄録

3歳から6歳の自閉症スペクトラム幼児(以下ASD児)123名と,保育園に在籍する定型発達幼児(以下一般児)131名の保護者に対し,食べ方の問題を「食事環境に関するもの」と,「食物処理に関するもの」に大別しアンケート調査を実施,年齢ごとに比較検討し,以下の結果を得た.

(1)食事環境に関して

6項目について調査した.3歳で60%近くのASD児に何らかの問題があり,4,5歳でやや増加し,6歳でも半数以上に問題がみられた.「じっと座っていられない」は年齢に関係なく半数以上にみられた.「いつもと違う場所だと食べない」,「いつもと違う人がいると食べない」,「食器が違うと食べない」3項目は療育により軽快する可能性があると考えられた.しかし「自宅あるいは通園でしか食べない」,「決まった時間に食べられない」ことは短期間では軽快しないと考えられた.

(2)食物処理に関して

7項目について調査した.年齢を問わず70から80%のASD児に問題がみられた.「スプーンやフォークがうまく使えない」がもっとも多く,一般児では皆無となる5,6歳以降も存続した.「口にいっぱい詰め込んでしまう」は年齢による減少はなく,「噛まずに飲み込む」,「口にためて飲み込まない」は年齢があがると却って増加しており,短期間では軽快しないと考えられた.「水分ばかり摂る」,「一度飲み込んだものを口に戻す」については,さらに検討が必要と考えられた.

(3)知的能力との関連について

知能障害がASD児の問題の発現に関係している可能性が考えられたのは,現段階では「食具がうまく使えない」の1項目であった.

著者関連情報
© 2007 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
前の記事 次の記事
feedback
Top