日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
段階的な嚥下食の物性に適した嚥下造影検査食の検討
山縣 誉志江栢下 淳
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2008 年 12 巻 1 号 p. 31-39

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抄録

【目的】嚥下機能の評価方法として行われている嚥下造影検査(VF)は,その検査結果が実際に摂取できる食事形態の評価につながらない場合がある.これは検査食にバリウムを添加することで,本来の食品の物性が変化しているためと考えられる.このことから,規格化された検査食が必要である.本研究では,嚥下食に関して実績を有する聖隷三方原病院で提供されている段階的な食事のうち,重度の患者に提供される段階1(開始食),段階2(嚥下食Ⅰ),段階3(嚥下食Ⅱ)を検査食作製のモデルとし,検査食の規格化を試みた.いずれの段階も,ゼリー等の均一な物性の食品が分類されている.段階1から段階3へと段階が上がるにつれ,該当する食品物性の範囲が広がることから,各段階の物性の上限と下限に適する検査食の作製について検討した.

【方法】50w/v%に希釈した液体バリウムに,市販のゲル化剤を用いてゼリーを作製した.ゲル化剤の添加量を変え,物性測定を行った.測定にはクリープメータを用い,かたさ・付着性・凝集性を算定した.

【結果】作製したバリウムゼリーは温度依存性を示した.ゲル化剤の添加量を変化させてバリウムゼリーを作製した時,ゲル化剤濃度とかたさには高い正の相関が見られた.それぞれの段階に適した検査食のゲル化剤濃度は,段階1で0.95%及び1.60%,段階2で0.65%及び1.95%,段階3で0.50%及び2.20%であることが分かった.

【結論】本研究で用いたバリウムゼリー作製方法により,段階的な嚥下食の各段階の物性に適した検査食を作製することができた.これを用いることで,検査食と日常的に摂取する食事の物性の整合性をはかることができる可能性が示唆された.

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© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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