日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
認定看護師と看護師の摂食・嚥下障害看護に対する認識の相違
千葉 由美市村 久美子
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2008 年 12 巻 3 号 p. 178-186

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抄録

【目的】本研究では,摂食・嚥下障害看護に対して認定看護師と看護師が行っている実践についてアンケート調査し,比較・検討することを目的とした.

【対象】対象は,2007年に実施の国内某学会主催による看護職集会への自由参加者である.総数156名分配布し,回収された64名分を解析した.

【方法】参加者に対し自記式質問用紙(無記名)を集会開始前に配布し,調査主旨を説明した上で,任意で回答を得た.集会の終了時に指定の場所に提出してもらった.調査内容は対象者の基本属性,摂食・嚥下障害患者への関わりの有無,多職種との連携,栄養サポートチームへの参加,口腔ケアの実施状況,摂食・嚥下障害に関する観察・評価の実施,学習ニーズや希望などであった.認定看護師資格の有無2群(認定あり群,認定なし群)と各調査項目をχ2検定にて比較検討した.統計ソフトはSPSSver14.0を使用した.

【結果】回答者の性別は女性63名(98.4%)で,平均年齢は38.1±8.2歳,平均勤務年数は13.6±7.2年であった.認定看護師の“認定あり群”14名 (21.9%),“認定なし群”50名 (78.1%) であった.両群で比較し,“認定あり群”で有意に回答率が高かった項目は,摂食・嚥下障害患者の年齢層で「青年期」,全身所見の「低栄養」「浮腫」のほか,先行期の「視覚・聴覚」,準備期・口腔期の「味覚・嗅覚」「口唇の開閉」「咀嚼運動」「唾液分泌」「舌運動機能」「口唇音」「舌尖音」「奥舌音」「顔面神経の所見」「顎関節」「舌咽・舌下・迷走神経の所見」「裏声」「PAP,PLP適応」の13項目,咽頭期の「嚥下時間」「甲状軟骨挙上距離,時間,ピッチ」「顎の前方運動」となっていた.学習の必要性は,「すこし感じる」「かなり感じる」が全体で95%以上と高かった.

【考察】摂食・嚥下障害看護は,認定の資格の有無に関係なく看護師もベッドサイドで必要となる技術が多い.観察や評価の実施率の違いは,これまでに受けた実践の教育が影響していたと思われる,摂食・嚥下障害看護は,今後の現任教育の課題のひとつであると考えられた.

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© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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