日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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短報
急性期病院における嚥下内視鏡検査の現状
山田 香織小口 和代才藤 栄一沢田 光思郎
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2008 年 12 巻 3 号 p. 233-239

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抄録

急性期総合病院において,2006年4月~10月に施行した嚥下内視鏡検査(VE:Video Endoscopic evaluation of swallowing)を調査した.VE総施行数は172件,133名,平均年齢75.3歳(26–96歳),入院主病名は脳卒中が57名(42.8%)で最多,次に肺炎が多かった.初回VE目的は「直接訓練の適応判定」が66.2%で最も多かった.VE施行症例数の多かった脳卒中と肺炎は,初回VEを中心にその特徴を分析した.

脳卒中群では,発症から初回VEまでの期間は中央値23日,初回VE目的は「直接訓練の適応判定」が78.9%であり,脳卒中群以外に比し有意に高かった (χ2検定 p<0.05).初回VE前後の食事変化は,VE前が絶飲食,VE後に直接訓練となった者が最多であった.

肺炎群(1.入院主病1名が肺炎,2.肺炎,脳卒中以外の疾患で入院し,初回VEまでの2ヶ月以内に肺炎を発症した者)は38名,平均年齢は80.4歳,肺炎群以外に比し年齢は有意に高かった (t検定 p<0.05).既往に脳卒中が52.6%,肺炎が28.9%にみられた.初回VE前後の食事変化は,VE前後共に絶飲食に留まる者が最多であった.

VE後一定期間の発熱者は肺炎群で多く,特に唾液誤嚥疑いの絶飲食例に多くみられた.肺炎群の発熱例は年齢も非常に高く,脳卒中や肺炎の既往が多かった.脳卒中群では直接訓練者に発熱が多かった.直接訓練以上での発熱ではVE再検査や嚥下造影の併用も重要と思われる.

肺炎で入院し,既往に脳卒中や肺炎がある場合は,重度の嚥下障害が多かったため,このような症例には初期より慎重に対応する必要がある.経口摂取の安全性の確認や嚥下訓練を進める上で,検査室確保がいらないVEは,移動困難例が多い急性期病院では非常に有用であった.

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© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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