日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
とろみ調整食品の力学測定法に関する検討
(Texture Profile Analysis の有用性について)
船見 孝博飛田 昌男星 正弘外山 義雄佐藤 信之金野 正吉疋田 久史伊藤 章一義平 邦周藤崎 享
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2009 年 13 巻 1 号 p. 10-19

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抄録

とろみ調整食品の力学測定法として,texture profile analysis (TPA)の有用性を検討した.市販のとろみ調整食品を,実際の使用に準じてイオン交換水中に分散,溶解し,力学特性を測定した.とろみ調整食品の力学特性はTPA による「かたさ」「付着性」「凝集性」のほか,B 型回転粘度計によるずり粘度,リング法による保形性,動的粘弾性の歪みおよび周波数依存性を測定し,特性値間の相関を検討した.また,同一試料を用いて測定機関間のクロスチェックを行った.

キサンタンガムを主成分とするとろみ調整食品は,貯蔵弾性率の周波数依存性が小さく,さらに力学的損失正接が測定した周波数範囲で0.1~1 であり,レオロジー的に弱いゲルの性状を示した.また,TPAから得られる「かたさ」および「凝集性」は架台速度による変化が小さかった.架台速度を10 mm/s とし,実用の添加量範囲(<5%)でTPA 測定を行った場合,「かたさ」が添加量に従って170~1,200 N/m2 の範囲で増加したのに対し,「凝集性」は「かたさ」によらず0.7~0.9 の範囲にあった.「かたさ」は粘度と正の相関が,リング法とは負の相関があった.同一の試料を用いた場合,「かたさ」および「凝集性」は測定機関によらずほぼ同一の測定値が得られたが,粘度では若干の解離があった.

以上の結果から,とろみ調整食品の力学測定法としてTPA が有用であり,「かたさ」-「凝集性」の二次元プロットがとろみ調整食品の有効な力学指標になることが示唆された.TPA は汎用機器で測定できること,粘度やリング法などの従来法との相関が高いこと,測定の再現性が高いことなどの特徴があり,とろみ調整食品の品質管理や食感構築に使用できる.

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© 2009 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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