2009 年 13 巻 3 号 p. 225-230
気管切開術は嚥下機能評価には悪影響を及ぼすとされており,なるべく早期に抜去することが望ましい.適切な時期に評価を行い,それに基づいて経口摂取を開始していくことが必要である.本研究は,気管切開患者における嚥下機能評価方法の検討を目的とした.
対象は平成19 年4 月から平成20 年3 月までに当科に紹介のあった気切患者のうち,38 人(女性13 人,男性25 人,平均年齢67 歳(15~88))とした.評価項目は初診時の年齢,原疾患,人工呼吸器管理に至った理由および舌の可動域評価,反復唾液嚥下テスト(RSST),Modified Evan's Blue Dye テスト(MEBDT)と,気切カフ上からの吸引物量とし,これらと初診から経口摂取開始までの日数の関係を調べた.
その結果,原因疾患と経口摂取開始までの時間との間には関係は認めなかった.年齢と経口摂取開始までの日数には有意に相関を認め (p=0.0054),年齢が高くなるほど経口摂取開始が遅かった.舌可動性,RSST と経口摂取開始までの日数には有意な差は認めなかった.MEBDT,カフ上吸引物の量と経口摂取開始までの日数については有意に関係が認められた(p<0.0001,p=0.0003).
舌の可動性やRSST では,気管切開患者における嚥下機能の評価は困難であると考えられた.MEBDT,カフ上吸引物量は初診から経口摂取開始までの日数と有意に関係があり,スクリーニング検査として有効であると考える.特にカフ上の吸引は看護師の日常業務のひとつであり,日常のケアの際に嚥下機能の評価も行えることは非常に有用であると考える.今後カフ上吸引物量の指標となる量を検討することが必要であると考えられた.