【目的】理学療法士が摂食嚥下リハビリテーションに関わる中で,摂食嚥下障害患者で頸部の関節可動域制限や摂食姿勢が問題となることがしばしば観察された.そこで,理学療法士と言語聴覚士が協力して,頸部の関節可動域と摂食姿勢および円背に着目して,摂食嚥下障害に関係している要因を検討した.
【方法】2008 年10 月から2009 年3 月にリハビリテーション依頼があった入院患者で,肺炎または脳血管障害と診断された患者27 名(男11 名,女16 名)を対象とした.対象患者を藤島の嚥下障害グレードでⅠ・Ⅱ群とⅢ・Ⅳ群に分類し,摂食姿勢および円背の有無,頸部の関節可動域について比較した.次に,摂食姿勢をギャッジアップ摂食群と座位摂食群に分類し,嚥下障害グレードⅠ・Ⅱ群とⅢ・Ⅳ群の頸部の関節可動域を比較した.続いて,円背の有無で分類し,嚥下障害グレードⅠ・Ⅱ群とⅢ・Ⅳ群の頸部の関節可動域を比較した.
【結果】頸部の関節可動域において,嚥下障害グレードⅠ・Ⅱ群では,Ⅲ・Ⅳ群より頸部の伸展,回旋,側屈の関節可動域に有意な制限がみられた.座位摂食群において,嚥下障害グレードⅠ・Ⅱ群では,Ⅲ・Ⅳ群より頸部の伸展,回旋,側屈の関節可動域に有意な制限がみられたが,ギャッジアップ摂食群では有意差はみられなかった.円背あり群,円背なし群において,嚥下障害グレードと頸部の関節可動域との関連性は見い出せなかった.
【考察】摂食嚥下能力が低下している患者に頸部の関節可動域制限がみられたことから,頸部筋群の柔軟性が低下することにより,関節可動域制限と摂食嚥下能力の低下を引き起こすと推測された.
摂食姿勢のアライメントが崩れている場合は,頸部の過緊張状態が生じ,頸部の関節可動域制限と摂食嚥下能力の低下を引き起こすと推測された.一方,摂食嚥下障害と円背との関連性は見い出せなかった.