日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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Print ISSN : 1343-8441
症例報告
パーキンソン病患者に対する脳深部刺激療法の嚥下機能に及ぼす影響について;3 例の経験から
北嶋 哲郎梅本 丈二坪井 義夫樋口 正晃馬場 康彦喜久田 利弘
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2011 年 15 巻 3 号 p. 324-331

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抄録

パーキンソン病は,進行性の神経変性疾患で,振戦,固縮,無動,姿勢反射障害などの運動症状が主徴である.口腔では,流涎,ジスキネジア,嚥下障害が高頻度にみられる.近年,進行期パーキンソン病患者に対する視床下核脳深部刺激療法(Subthalamic nucleus deep brain stimulation:STN-DBS)が数多く実施されるようになってきた.STN-DBS は,外科手術でパーキンソン病の運動症状の改善や投薬量を減らすことを目的とした治療法である.一方で,嚥下障害に対しては一定の見解が得られていない.今回,われわれはSTN-DBS を受けたパーキンソン病患者3 例に対し,全例でDBS 術後半年に,うち2 例は術前と術後1 週間に,DBS オン時とオフ時で嚥下造影検査を行った.その結果,症例によって異なる変化を経験したので報告する.

【症例1】69 歳の男性.パーキンソン病を発症し罹病期間18 年でSTN-DBS を施行.術前後で,パーキンソン病統一スケール(UPDRS)パートⅢは66 から24 に改善した.術後半年でVF 検査を行ったところ,DBS オフ時よりDBS オン時で口腔咽頭通過時間は短縮し,嚥下障害スコアは改善していた.

【症例2】72 歳の女性.パーキンソン病を発症し罹病期間10 年でSTN-DBS を施行.術前後でUPDRS パートⅢは19 から17 と,大きな変化はみられなかった.咀嚼嚥下状態は,術後1 週間ではDBS オフ時よりむしろDBS オン時で口腔咽頭通過時間は延長し,嚥下障害スコアは悪化した.しかし,術後半年では,DBS オフ時とオン時ともに嚥下障害スコアは改善した.

【症例3】56 歳の女性.パーキンソン病を発症し罹病期間13 年でSTN-DBS を施行.術前後で,UPDRSパートⅢは56 から5 に改善した.嚥下障害スコアは術前,術後1 週間,術後半年で,DBSオン時とオフ時の間に差はなかった.

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© 2011 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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