日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
摂食・嚥下障害を合併して入院した神経筋疾患患者における栄養摂取レベルの推移
―Functional Oral Intake Scale (FOIS) を用いた検討―
松尾 浩一郎望月 千穂並河 健一牧井 覚万河瀬 聡一朗脇本 仁奈武井 洋一大原 慎司小笠原 正
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 16 巻 1 号 p. 3-12

詳細
抄録

【目的】神経筋疾患患者では,無自覚のうちに摂食・嚥下障害が進行し,誤嚥性肺炎や窒息などの重篤な合併症により入院することが多い.そこで,本研究では,摂食・嚥下障害を有する神経筋疾患患者の栄養摂取レベルが,入院と嚥下内視鏡検査(videoendoscopic evaluation of swallowing, VE)を通してどのように推移したか,後ろ向きに調査を行った.また,どのような臨床症状が,VE 後の栄養摂取レベルと関連性があるのか検証した.

【対象と方法】某病院に入院後,嚥下外来を受診した神経筋疾患患者25 名を対象とした.本研究では,対象者の問診表,摂食・嚥下機能評価表(嚥下評価表),VE 評価用紙から必要事項を抜粋し,後ろ向きに調査した.入院前,入院後,VE 後での栄養摂取レベルをfunctional oral intake scale(FOIS)を用いて評価し,統計学的に比較した.また,嚥下評価表およびVE 評価用紙の中から,VE 後のFOIS に関連した因子があるか否か分析を行った.

【結果】入院理由は,肺炎・発熱と食欲低下が9 例でいちばん多かった.FOIS 値は,入院前と比べ,入院後で有意に低く(p=0.002),VE後でも有意に低下したままであった(p=0.023).VE後のFOIS 値は,嚥下評価表の「食物残渣」「湿性嗄声」「随意の咳」の項目および,VE 検査表の「咽頭唾液貯留」の項目と有意な関連性を示した.

【結論】肺炎・発熱や食欲低下などを理由に入院している場合,多くの患者で,入院を通して栄養摂取レベルが低下していたことが明らかになった.症状の重篤化による入院となる前にスクリーニングや適切な評価を行い,摂食・嚥下障害由来の合併症を予防する必要性があると考える.また,今回の結果で,有意な値をとった関連因子が,今後,栄養摂取レベル評価のためのスクリーニングの指標になる可能性が示された.

著者関連情報
© 2012 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
次の記事
feedback
Top