抄録
本研究では,加湯・攪拌することでゲル状のブレンダー粥が調製できる市販粉末状食品を材料とし,攪拌条件を変えて試料を調製した.特別用途食品えん下困難者用食品規格基準の試験方法に従って測定したテクスチャー特性,および簡便な評価方法であるリング法により力学的特性を把握し,官能評価より得られた食べやすさとの関係を検討した.本研究で用いたゲル状ブレンダー粥試料は,厚生労働省が定めた特別用途食品のえん下困難者用食品規格基準,許可基準Ⅱの硬さ(1×103 ~1.5×104 N/m2)および付着性,凝集性の基準範囲内であった.粉末ゲル状ブレンダー粥を材料としたゲル試料は,加熱調製中に多数回攪拌を行うことで,ゲル形成が阻害され,試料品温45℃,20℃いずれにおいても,テクスチャー特性の硬さは軟らかくなったが,付着性は試料品温により,多数回攪拌の影響が異なった.リング法による測定では,加熱調製中に多数回攪拌を行うことで軟らかいゲルとなった試料の広がり係数は大きく,すなわち広がりやすく,測定に使用したガラスリングへの試料の付着重量も大となった.このような特性を有するゲル状ブレンダー粥試料は,官能評価により,軟らかく,べたつき感があり,飲み込みにくい傾向であると評価された.以上の結果より,許可基準Ⅱの硬さの基準範囲内にある軟らかいゲル状食品の食べやすさは,簡便な測定方法であるリング法により推測可能であることが示唆された.本研究において,試料品温により,テクスチャー特性の付着性とべたつき感の関係が異なった結果を受けて,的確に食べやすさをあらわすことができるテクスチャー特性の付着性の測定方法を検討する必要性が示唆された.