日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
消化器がん周術期患者に対する口腔ケアの免疫学的検討
野村 綾子
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2012 年 16 巻 1 号 p. 50-56

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抄録

周術期の口腔ケアにより人工呼吸器関連肺炎や創部感染の予防効果があるとされ,手術患者の口腔ケアが推奨されている.口腔内細菌の減少は感染性合併症予防の重要な要因と考えられるが,それ以外に,患者の免疫機能や栄養状態も関与すると考えられる.本研究では,口腔ケアの効果発現の要因のひとつに免疫機能も関与していると想定した.そこで,口腔ケアと免疫機能の関係について明らかにすることを目的に,口腔内細菌数とともに,免疫機能の指標としてNK 細胞活性を測定した.

消化器がん手術を受ける患者36 名を対象に,従来通り本人または介護従事者が口腔清掃に関わったコントロール群と,歯科医師が入院前に1 回,術後2 日目より6 日目までの間,原則として毎日1 回口腔ケアを実施した口腔ケア群の2 群に分けた.そして,口腔内細菌数,NK 細胞活性,プレアルブミンを測定した.

その結果,口腔内細菌数は,コントロール群では手術前に比べ術後7 日目に増加し,口腔ケア群では増加しなかった.NK 細胞活性は,コントロール群では手術前に比べ術後7 日目に低下したが,口腔ケア群では低下せず,同一レベルに維持できた.プレアルブミンは両群ともに,顕著な低下を示した.

以上より,術後の消耗が激しい消化器がん患者において,周術期に歯科医師による口腔ケアを実施することにより,自浄作用が働きにくい口腔内の細菌数増殖を抑制することができた.また,ソーシャルサポート感によるものと推察されるが,NK 細胞活性も維持することができた.今後,消化器がん患者の周術期にも口腔ケアが普及することが望まれる.

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© 2012 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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