日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
大規模災害時の歯科保健医療体制における摂食・嚥下障害患者に対する対応の準備状況および体制整備へむけた調査
中久木 康一戸原 玄小城 明子
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2012 年 16 巻 1 号 p. 57-63

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抄録

大規模災害時における被災者に対する保健医療体制は整備されつつあるが,災害弱者である難病患者への体制整備などはまだ不十分であるといわれている.歯科においては,摂食・嚥下障害をもつ高齢被災者への栄養摂取の問題への対応が期待されており,歯科における摂食・嚥下障害患者に対する備えの実態の概略を把握したうえで,われわれが提案した救護体制案についてアンケート調査を行い,今後の対応に必要な課題を調査した.

災害時に摂食・嚥下障害患者に対して可能な支援としては,歯科治療のみならず摂食・嚥下機能の判定,食事指導,口腔ケアへの対応が可能であるとされたが,救護体制はほとんどの場合整っていなかった.しかし,6 割が,その救護体制を整備する必要性を認めていた.また,提案した歯科医師会と病院歯科とが連携した支援体制については,歯学部においては対応が可能としたところも少なくなかったが,診療所においては対応が困難であり,病院や歯科医師会においては,返答にばらつきがみられた.

摂食・嚥下障害は歯科のみで対応するものではなく,さらに摂食・嚥下機能の判定が可能であった場合にも,実際に食べられる食事をどのように提供してゆくかという問題も存在する.このように,地域横断的な,行政機関や職能団体における連携・支援体制を含めたマニュアルやガイドラインなどが必要とされ ており,これらをふまえて,多職種連携における各関係職の教育研修会,情報交換などを実施していく必要性が示された.

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© 2012 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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