日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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症例報告
薬剤の口腔内残留により潰瘍を形成した摂食・嚥下障害の1例
寺田 泉大野 友久藤島 一郎高柳 久与
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2012 年 16 巻 1 号 p. 70-74

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抄録

【緒言】摂食・嚥下障害患者における薬剤の内服方法は,重要な問題である.今回われわれは,薬剤の口腔内残留により,潰瘍形成を認めた症例を経験したので報告する.

【症例】89 歳女性.高血圧,脳梗塞後遺症.認知症のため意思疎通はやや困難.平成X年より施設入所.入院前は車椅子,普通食摂取であった.平成X+12年10月,肺炎,呼吸不全,摂食・嚥下障害疑いで当院呼吸器科に入院.主科判断により食事形態はミキサー食となっており,介助にて3 食摂取していたが,時折ムセることがあった.

【経過】平成X+12 年11 月に,看護師より口腔内から出血があるとの報告があり,歯科介入開始.口腔内所見は,無歯顎で口腔乾燥あり,右頬粘膜~舌下部,右口唇にかけて緑黄色の粘膜の変色,中心部には潰瘍形成と出血を認めた.口腔ケアを歯科衛生士にて継続実施し,改善が認められた.しかし,口腔ケア開始5日目に,左頬粘膜~舌下部にも同様の所見が認められた.その際,鉄剤(フェロ・グラ錠®)の同部位への残留が認められ,それによる潰瘍形成が推定された.改訂水飲みテストで問題がなかったため,主科より,薬剤は食後に水で内服という指示になっていた.そこで,歯科衛生士から看護師に,薬剤の服用後に口腔内残留がないか確認してもらうよう依頼した.しかし,その2 日後には,抗血小板薬(プレタール錠®)の口蓋部への残留が認められたため,病棟看護師と検討した結果,薬剤をゼリーに埋め込む内服方法に切り替えた.それ以後は,問題を認めなかった.上記口腔ケア方法を継続し,左右頬粘膜の潰瘍は20日で完全に治癒した.

【考察】薬剤の口腔内残留は,本症例のように粘膜を損傷させる恐れがあるばかりか,必要量の薬剤が体内に吸収されないことにもつながり,大きな問題である.歯科衛生士の重要な役割としては,口腔ケアだけでなく,薬剤の口腔内残留の発見や,適切な薬剤の投与方法を提言するのも責務のひとつであると考えられた.

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© 2012 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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