2013 年 17 巻 2 号 p. 153-163
要介護度にかかわらず,食べることは高齢者の楽しみのひとつにあげられるが,摂食・嚥下機能障害(以下摂食・嚥下障害)を有する在宅高齢者も多い.病院や高齢者介護施設では,専門職による摂食機能評価や検査をもとに嚥下障害の程度を判断し,口から食べる工夫を積み重ねてきた.しかし,在宅で介護を受ける摂食・嚥下障害者にとっては,介護保険による生活支援は行われているものの,その障害についての知識も乏しく,また専門職の介在も少ないため,情報発信の場を検討する必要がある.このため,在宅で生活する摂食・嚥下障害を有する高齢者の現状とニーズを調査する目的から,新潟大学医歯学総合病院に介護食品や介護食器具およびその資料を展示する「食の支援ステーション」を設置し,専門職員を配置して来訪者の相談に対応するとともに,「食の支援ステーション」の来訪者にアンケート調査を実施し,今後の課題を検討した.
平成21 年10 月から3 年間で来訪した2,433 名のうち,アンケートに答えた相談者は370 名であった.相談者の年齢は50~70 歳代が68.4% を占め,調査時点で食事の問題を抱えている人は87.3% と非常に多かった.また,相談の対象は本人が34.2% であるのに対し,家族が59.0% と,介護者による相談が多かった.支援を必要とする内容は,咀嚼・嚥下に関する問題が多く,希望する情報も介護食に関するものが多かった.「食の支援ステーション」に対する要望としては,専門職による製品の解説が最も多く,次いで展示商品の購入の要望が多かった.以上より,在宅摂食・嚥下障害者に対する専門的な介入は重要であることが示された.自立した食事や介護者の負担軽減のために,食の支援ステーション活動としては,障害の程度に対応した介護食や介護食器具の選択ができるよう,助言や製品の説明などが重要であることが示唆された.