哺乳行動は,吸啜・嚥下・呼吸が協調して行われる一連の運動である.そのため,哺乳障害の病態も,吸啜だけでなく,嚥下や呼吸に障害がある場合や,これらの運動の協調に問題がある場合もある.
今回われわれは,哺乳障害をもつ男児に,嚥下造影検査(以下,VF)と喉頭ファイバー検査を施行し,哺乳障害の病態を喉頭軟化症と喉頭麻痺によるものと診断した.さらに,摂食機能獲得のための訓練を行い,摂食機能を獲得した症例を経験したので報告する.
症例は,妊娠経過中,出生時に異常は認められなかった.生後,哺乳力不良で肺炎を発症し,喉頭軟化症を認め,経管栄養管理となった.その後,経口哺乳を試みたが,誤嚥性肺炎を発症.生後11カ月時に,嚥下機能評価目的で当院受診となった.
VF の結果,水様の造影剤に誤嚥が認められ,ポタージュ状にとろみをつけた造影剤では誤嚥がみられなかった.また,喉頭ファイバー検査では,喉頭軟化症はほぼ改善されていたが,喉頭麻痺がみられ,声帯の閉鎖不全が確認された.初診時,哺乳以外の成長・発達の遅れはなかった.
本症例の哺乳障害の病態は,哺乳時に強い吸気運動が起こると,声帯の閉鎖不全のために嚥下による防御機構が間に合わず,誤嚥すると考えられた.そのため哺乳は中止し,離乳を進めることとした.また,水分摂取に関しては,ポタージュ状のとろみをつけ,スプーンから始めコップ,ストローを使用して訓練を行った.1歳10カ月には,とろみ茶をむせずにコップで飲めるようになった.次に,とろみの濃度を1/2 の濃度にして訓練をし,2歳9カ月には,とろみなしのお茶をむせることなく飲めるようになった.経過中,誤嚥性肺炎などのトラブルがなく経過したので,良好と判断した.ストロー飲みも同様に,とろみ茶から訓練を始め,3歳9カ月には声帯の閉鎖不全は軽度残存していたが,ストローで飲むことができるようになった.
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