2015 年 19 巻 2 号 p. 127-135
【目的】本研究の目的は,きわめて重い嚥下障害のある高齢患者の摂食援助に対する看護師の考え方を明らかにすることである.
【方法】経口摂取への強い意思をもち,かつ誤嚥の危険性がきわめて高い83 歳男性の紙上事例を用いて,同一病院の看護師129 名の経口摂取への考え方を調査した.
【結果】同じ人においても,家族としての立場では,看護師の立場よりも強く経口摂取の継続を望んでいた(p<0.01).また,看護師として経口摂取を続けるべきと強く考える人ほど,家族としても強く考えていた(r=0.731,p<0.01).紙上事例に類似した人が身近にいる人はいない人に比べて,家族の立場で考えた場合に経口摂取を続けることへの思いが強かった(p<0.01).
【考察】同じ看護職種間で意見が分かれるのは,食べる喜びを患者に感じてもらいたいという気持ちと,誤嚥による苦痛と生命の危険を避けたいという気持ちが同時に起こり,ジレンマが生じるためと考えられる.
【結論】本研究の結果から,同一職種である看護師においてもそれぞれが違う考えをもっている可能性を考慮しながら,例えばファシリテーションスキルのような,有効な意見交換と方針統一をはかる方法の必要性が示唆された.