2015 年 19 巻 2 号 p. 136-144
【目的】脳卒中急性期において誤嚥性肺炎発症は,リハビリの開始や継続,在院日数にも影響を及ぼす.脳卒中患者に対する口腔ケアを入院早期から実施することを標準化し,組織的に取り組むことで,患者のADL や予後の改善を目指した.
【対象】2010 年4 月1 日から2013 年3 月31 日までに入院した脳卒中急性期患者で摂食機能療法の対象者336名のうち,標準化以前の介入前群70名と標準化された口腔ケアを実施した介入後群127名を対象とした.
【方法】口腔ケアを多職種が関与できるように標準化し,さらに脳卒中急性期から早期介入する口腔ケアのフローチャートを組み込んだ.標準化以前の介入前群と1 年の周知定着期間をおいて標準化された口腔ケアを実施した介入後群の属性および,誤嚥性肺炎の有無,発熱の有無,気管挿管・気管切開の有無,胃瘻造設の有無,嚥下グレードの改善率,退院時日常生活動作,在宅復帰の有無の7 項目を比較した.分析には統計ソフトSPSS Ver.21 を使用し,統計学的有意水準は5% 未満とした.
【結果】発熱の発生は有意に低下した(介入後群10.2%,介入前群37.1%).誤嚥性肺炎の発症に有意差はなかったが,発症を減少させた(介入後群13.4%,介入前群18.6%).胃瘻造設患者の減少(介入後群11.8%,介入前群24.3%),退院時の日常生活動作の改善(介入後群78.0%,介入前群60%),退院後の在宅復帰増加(介入後群63.8%,介入前群41.4%)は有意であった.
【結論】脳卒中急性期において,入院当日から口腔ケアを早期に介入することは,発熱の減少や誤嚥性肺炎を抑制するなどの短期的効果や,在宅復帰率の増加など中長期的な予後改善,およびQOL 向上に有用であることが示唆された.