日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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短報
透析患者に対して歯科衛生士が看護職・介護職との連携によって実施した口腔ケアの効果
吉田 理恵神崎 美奈子立石 登
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2015 年 19 巻 2 号 p. 145-151

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抄録

【目的】口腔内に顕著な特異性を示すことの多い透析患者に対して,歯科衛生士と看護職・介護職が連携し実施した口腔ケアの効果について検討する.

【対象】入院中の透析患者のうち,専門的口腔ケアの依頼があり,歯科衛生士による口腔ケア計画書に基づく口腔ケアを3 カ月間継続して実施した12 名である.

【方法】歯科医師・歯科衛生士が口腔アセスメントシートを使用した口腔内診査を実施した後に,看護職・介護職に対する研修会を実施し,病棟内で行われる口腔ケアを標準化した.口腔ケアは1 日4 回実施し,そのうち1 回は歯科衛生士による専門的口腔ケアであった.

【結果】今回対象となった透析患者全員に,口腔乾燥症,プラークの付着や舌苔,歯周炎などの顕著な口腔所見が認められた.歯科衛生士による専門的口腔ケアの実施により,プラークおよび舌苔は除去された.また,看護職・介護職に対する研修会の実施と口腔ケアを標準化することで,口腔清掃としての口腔ケアのほかに唾液腺のマッサージ等に取り組むことが可能となった.その結果,口腔乾燥症等が改善したことで,実施3 カ月後の血液検査結果では12 名全員の炎症所見および栄養状態の改善が有意に認められた.

【考察】透析患者は,口腔内に顕著な特異性を示すことが多いが,歯科衛生士が看護職・介護職と連携をはかることで,プラークの付着や歯周炎,舌苔,口腔乾燥症に対するアプローチを継続的に実施することが可能となった.血液検査結果からは,口腔内所見の改善が,炎症所見および栄養状態の改善につながることが示された.今後もさまざまな領域において,専門的口腔ケアの期待が増すことが予測される.専門的口腔ケアを安全かつ効果的に実施するためには,歯科医師・歯科衛生士と他職種との連携が重要である.本研究は,今後さらに期待される専門的口腔ケアの拡大に向けた取り組みに示唆を与えるものであると考える.

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© 2015 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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