日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
リハビリ用マウスピースによる摂食嚥下機能への効果
小山 秀紀金髙 弘恭猪狩 光郎矢吹 浩一山口 一良小山 重人出江 紳一
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2018 年 22 巻 3 号 p. 237-248

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抄録

本研究では,摂食嚥下リハビリ用マウスピースを新たに開発し,その有用性を明らかにすることを目的とした.このマウスピースは,舌を挙上させる運動を補助することで,簡便かつ効果的に摂食嚥下機能を向上させることを意図して設計された.舌を口蓋へ適切に押し付けるための傾斜部を備え,一定の抵抗負荷を与えるために高硬度の医療用シリコーンゴム(MED-6019, NuSil Technology, USA)で成型された.また,個人の口蓋形態に適合するように,舌接触部の傾斜が20°,30°,40°の3種類が製作された.調査では,マウスピースを用いた舌挙上訓練が嚥下機能に及ぼす影響を調べた.対象は通院患者20名,調査デザインは単群試験とした.介入期間は3カ月間,測定時点は初日・1カ月後・3カ月後の訓練前・訓練後であった.測定項目は,舌圧測定器(Orarize®, ジェイ・エム・エス)を用いた舌圧と口唇圧,口腔水分計(ムーカス®,ライフ)を用いた口腔粘膜湿潤度,ガム法に基づく咀嚼能率,RSSTによる反復唾液嚥下回数であった.訓練課題は,対象者の口蓋角度に近似のマウスピースを自宅で1日1回,15分間装着し,そのうち3分間の舌挙上訓練とした.統計解析は,介入期間と訓練を要因とする二元配置分散分析を行った.分析対象は,60歳未満,途中離脱者を除き,軽・中等度の嚥下障害が疑われる高齢患者13名(60~82歳,平均年齢73.5±6.4歳,男性5名,女性8名)であった.分析の結果,舌圧で介入期間の主効果が有意であり(p<0.05),初日に比べて1カ月後が有意に高かった(p<0.05).また,介入後に口唇圧が増加し,訓練直後に嚥下回数が増加する傾向がみられた.本マウスピースを装着して舌挙上訓練を継続的に行うことで,高齢患者の舌圧が増加し,摂食嚥下機能に寄与する可能性を示した.

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© 2018 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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