日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
臨床現場で実用可能なマドラー型粘度測定機器の開発
宮城 翠森本 博海老原 覚
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2021 年 25 巻 1 号 p. 44-51

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抄録

【目的】とろみ付き液体(とろみ)は嚥下障害患者に対するアプローチとして世界的に広く用いられている.とろみの効果は機能的には明らかになっている一方で治療効果としてはエビデンスレベルが低い.その原因として画一的な基準がないことが指摘されている.本邦では学会分類2013 にて3 段階の濃度について主観的指標・粘度などが記載されている.しかし,粘度を計測するにあたり従来の回転式粘度計は測定時間の長さ・操作の煩雑さ・高価格等の点から,実際の現場では普及していないのが現状である.科学的・臨床利用双方の観点から,簡便で画一的な基準の必要性が示唆されている.今回我々は簡易粘度測定機器トロマドラー® を開発し,とろみ測定機器としての有用性を検証した.

【方法】検証 ① 20℃,30℃,40℃に調整した6 つの調味料などの試料,計18 試料をE 型回転式粘度計とトロマドラー® にて測定した.検証 ② キサンタンガム系の3 種類のとろみ調整食品を溶質,水とオレンジジュースを溶媒に用いて学会分類2013 にて定義されている3 段階の濃度に設定し,計18 試料をE 型回転式粘度計とトロマドラー® にて測定した.

【結果】検証 ① 20℃,40℃の温度帯において,ずり速度50 s-1 の粘度に対するトロマドラー® の値は,有意な相関関係を示した.また,検証 ② では各溶媒において粘度に対するトロマドラー® の値は,有意な相関関係を示し,同じとろみ調整食品・同じ溶媒の試料の粘度変化をトロマドラー® が捉えられる可能性が示唆された.

【結論】今回の結果から,トロマドラー®は各食品試料・溶液における,温度や溶液の濃度による粘度の変化をとらえられる可能性が示唆され,とろみの粘度に関する概略値や,再現性を確認することに支障はないと考えられた.多忙な医療や介護の現場ではとろみ作製の際,簡易的に客観的評価が行えるツールが必要である.今回の検証で,トロマドラー® はその役割を担える可能性が示唆された.今後は,教育ツールとしての応用も視野に,現場での活用を広めていきたい.

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© 2021 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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