日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
再建プレート除去による下顎偏位に対し顎義歯を活用し常食~軟菜食の摂取が可能となるまで回復した1 症例
中村 祐己板東 祥太
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2023 年 27 巻 1 号 p. 75-82

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抄録

 【症例】85 歳,女性.右側下顎歯肉癌に対して,右側下顎骨区域切除術,右側頸部郭清術,左側前外側大腿遊離皮弁とプレートによる再建術を施行ののち顎義歯を製作し,常食~軟菜食を経口摂取できていた.手術から11 カ月後,プレート周囲組織の感染が生じ,プレート除去術施行.その結果,下顎は右側に大きく偏位し,顎義歯を装着しても咬合が不可となり,これまでの食事の摂取が困難となった.また,残存する顎・舌・頬粘膜・皮弁で囲まれた下顎右側に新たに生じたスペースに食事が滞留し,口腔内の不衛生や,食事による疲労が問題となった.食形態の調整が必要と考えられたものの,患者本人はこれまでの食形態の摂取継続を希望した.そこで,口腔衛生状態の改善,食事による疲労の軽減を目的に顎義歯の形態を修正した結果,スペースへの食渣の滞留を減少させ,口腔衛生状態の改善,食事による疲労の軽減を認めた.顎義歯の形態修正により,下顎の偏位に伴う食べる機能の低下を器質的・機能的に補うことができた.

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© 2023 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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