2000 年 4 巻 1 号 p. 48-52
Wallenberg症候群患者の嚥下動態をX線ビデオ透視検査(以下VF)によって定量的に評価した.患者は69歳男性で,嚥下障害を主訴に来院した.経管栄養のままで軟口蓋挙上装置を併用した基礎的な摂食訓練を行ったところ,約2か月で常食の嚥下が可能になった.しかし退院後も固形物の嚥下困難を訴えていたため,VF検査を行ったところ,食道入口部の弛緩不全が認められたので,輪状咽頭筋切断術を行った.手術前後の嚥下機能をVF検査によって,定量的,定性的に分析したところ以下の結果が得られた.
治療開始前と治療終了後のVFの結果を健常人と比較すると喉頭挙上開始時間,食道入口部到達時間,食道入口部開大時間のすべてにおいて健常人の2SDを越え,特に喉頭挙上開始時間と食道入口部到達時間が顕著に延長していた.治療前後の比較では,喉頭挙上開始時間,食道入口部到達時間がやや改善していた,これらの結果からWallenberg症候群患者では,輪状咽頭筋弛緩不全のみならず,喉頭挙上開始時間や食道入口部到達時間の延長もみられ,嚥下の咽頭期の全般にわたって障害がみられることが明らかとなった.