日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
在宅患者における摂食・嚥下障害に関する調査
―訪問看護ステーション看護婦に対する質問調査―
直江 祐樹高山 文博太田 清人森 正博
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2000 年 4 巻 2 号 p. 30-37

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抄録

摂食・嚥下障害のある患者が在宅生活をしていくためには,食事の介助や環境の整備が不可欠となる.

今回我々は,在宅患者における摂食・嚥下障害の現状を把握すること,嚥下障害を改善する方法を検討することを目的に,三重県内の伊勢,津,久居地区の訪問看護ステーションの看護婦に対し,訪問看護を受けている患者について,アンケート調査を行った.

訪問している患者169名中,摂食・嚥下障害がある患者の数は28名(男性14名,女性14名,16.6%),経管栄養を利用している患者は5名(3.0%)であった.

60歳代と70・80歳代を比較すると,摂食・嚥下障害の割合は,60歳代5.3%であったのに対し,70歳代18.8%,80歳代18.7%と増加している傾向であった.

肺炎を起こしたことがある患者は,14名(50.0%)であった.むせがある患者17名中肺炎を起こしたことがある患者は11名(64.7%),むせが無い患者11名中肺炎を起こしたことがある患者は3名(27.3%)と,むせがある患者のほうが肺炎の既往が多い傾向が見られた.

食事の姿勢でギャッジアップ90°以上の患者では,むせる患者が11名中9名(81.8%)と多く,60°以下では,むせる患者は17名中8名(47.1%)と少なかった.普段と食事時の座位レベルが同じ患者と,座位レベルを低下させている患者のむせの有無の関係は,座位レベル同じでむせがある患者は16名中12名(75.0%),座位レベル低下でむせがある患者は12名中5名(41.7%)と,座位レベル同じの患者は,座位レベル低下の患者に比較してむせる患者が多い傾向が見られた.

食事時間とむせの関係では,介助で食べさせている患者で,むせがあるにもかかわらず,短時間(30分以内)で食べ終わる患者が最も多く,28名中10名(35.7%)であった.

在宅において嚥下障害のある患者を見て行く際,患者の障害だけでなく,加齢も考慮して行くことが必要と考えられた.肺炎を予防するために,むせを減らすことが必要で,その方法の1つとして,食事時の座位レベルを下げ姿勢を安定させる,患者のペースに合わせて介助することなどが考えられた.

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© 2000 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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