日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
超音波ドプラ規格化検査法を用いた嚥下口腔相における食塊移送の評価に関する検討
原 明美大塚 義顕向井 美惠
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2002 年 6 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

目的: 摂食・嚥下障害をもつ患者にとって,口からおいしく安全に食事をとるということは重要な課題である.したがって,口腔機能に合った食内容の提供は重要であると考えられ,機能および食物物性の評価,そして両者を総合して評価することは必要不可欠であると考えられる.我々は,新しい食塊の観察および評価方法として,超音波ドプラ法を用いた食塊移送の規格化検査法を考案し,既に報告した.本研究では,本検査法における物性の異なる食品を用いた場合の食塊移送の評価の有効性について検討を行った.

方法: 対象者は健康成人男性11名とし,物性の異なる3種の食品を用い,その他の描出条件および解析方法はすべて我々の考案した超音波ドプラ規格化検査法に準じて検査を行った.測定項目は,最高速度,流入時間,最高速度到達時間,平均加速度とした.また,各被験食品に対し,あらかじめ物性試験を行い,かたさ応力,付着性,凝集性をテクスチャー解析から,粘性率,弾性率をクリープ解析から,さらに,みかけの粘度およびずり応力を流動解析から求めた.

結果: 今回の被験者から得られた値は,個人内変動係数が小さく,食塊移送の評価に耐え得る数値であると考えられた.4つの測定項目のうち,物性の違いによる値の違いが最も明らかな傾向として表れたのは,最高速度であった.しかし,平均加速度,流入時間,最高速度到達時間の順に物性の違いとの傾向が表れにくいことが判明した.また,物性試験の結果を考慮すると,付着性は最高速度や平均加速度に,粘性率は流入時間にそれぞれ影響を及ぼす可能性が考えられた.

以上の結果から,本検査法は物性の違いに対応した食塊移送の様相の違いを設定した指標により示すことが可能であると考えられた.特に本検査法は,時間的項目よりも速度に対して,物性に対応した検出力が高い可能性が示唆された.今後さらに,対象者の幅を広げ,描出条件について改良を加えることで,嚥下障害者用の食品物性の規準検査の一つとして発展する可能性があると考えられた.

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© 2002 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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