日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
摂食・嚥下障害スクリーニングのための質問紙の開発
大熊 るり藤島 一郎小島 千枝子北條 京子武原 格本橋 豊
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2002 年 6 巻 1 号 p. 3-8

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抄録

【目的】摂食・嚥下障害を効率よくスクリーニングでき,かつ日常の臨床場面で簡便に使用できる質問紙を作成する.【質問紙】質問紙は15項目からなり,肺炎の既往,栄養状態,口腔・咽頭・食道機能,声門防御機構などが反映される構造で,「A:重い症状」「B:軽い症状」「C:症状なし」の三段階で回答するようになっている.【対象と方法】①繰り返し記入による信頼性の検討:同一被験者84名(平均年齢56歳)に1週間以上の間隔をおいて2回質問紙に記入してもらい,1回目と2回目の回答を比較し,信頼性について検討した.②特異度,敏感度の検討:嚥下障害があるが経口摂取が可能なレベルの脳血管障害患者50名(嚥下障害あり患者群:平均年齢69歳),嚥下障害のない脳血管障害患者145名(嚥下障害なし患者群:同69歳),および健常者群170名(同65歳)を対象として,それぞれに質問紙での評価を行った.各群で項目ごとにA,B,Cの回答を集計し,嚥下障害あり患者群とその他の群とで比較を行い,特異度,敏感度を算出した.【結果】自己記入による1回目と2回目の得点の反復性は良好でCronbachのアルファ係数は0.8473と高い信頼性を示した.嚥下障害あり患者群50名のうち46名(92.0%)が,いずれかの項目にAの回答をしていた.また嚥下障害なし患者群および健常者群の計315名の中でAの回答があったのは31名(9.8%)のみであった.以上の結果をふまえ「Aの回答あり」を嚥下障害ありと考えることとして本質問紙の嚥下障害検出の特異度と敏感度を計算したところ,特異度=90.1%,敏感度=92%,偽陽性率=9.9%,偽陰性率=8%となった.【結語】今回作成した質問紙は高い信頼性,敏感度,特異度を有していた.本質問紙は簡便であり,様々な集団に対する摂食・嚥下障害のスクリーニングに有用であると思われる.

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© 2002 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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