2002 年 6 巻 2 号 p. 158-166
嚥下障害患者100名に対し喉頭ファイバースコープ検査(以下ファイバー)を施行し,ゼリーの残留量,唾液梨状窩貯留,唾液喉頭流入及び喉頭の感覚を評価した.喉頭の感覚の評価法としてファイバー先端を喉頭蓋喉頭面の中央部(上喉頭神経領域)に接触させ,患者から得られたファイバー接触時の主観的感覚及びその反応(以下,喉頭感覚)を,「感覚なし又は微かに判る」の感覚不良群,「はっきり判る又は嚥下反射や逃避反応を示す」の感覚良群の2群に分類した.更に各患者について摂食時の体幹角度の設定,ファイバー検査時におけるゼリーの残留量,唾液梨状窩貯留,唾液喉頭流入,嚥下造影(Videofluoroscopy:以下VF)時におけるゼリーの残留量,誤嚥の所見及び経口摂取の程度を示す嚥下グレード(藤島),肺炎発症の有無を調査し,喉頭感覚との関連性を検討し,以下の知見を得た.①VF上の誤嚥,嚥下グレード,肺炎の有無と喉頭感覚には有意な関連が認められた.②他のファイバー所見(ゼリーの残留量,唾液梨状窩貯留,唾液喉頭流入)やVF上の誤嚥と嚥下グレード,肺炎の有無には一貫した関連は認められず,喉頭感覚が最も相関性が高かった.③ファイバーによる喉頭感覚評価は嚥下障害患者の予後予測としての経口摂取の可能性,誤嚥性肺炎の危険性を考える上での新たな指標となり得ることが示唆された.