舌部切除後二次的片側頚部郭清術を施行した症例および舌の再建術を施行した舌癌患者12例の摂食・嚥下機能評価をおこなった.本研究では切除された舌骨上筋群および再建方法と嚥下機能との関連性と術前の嚥下機能を基準に術後の経時的嚥下機能の変化を検討した.
1)舌可動部亜全摘再建症例および舌亜全摘再建症例は,術前においても舌運動機能および検査食の移送が困難であった.
2)舌部切再建症例および舌半切再建症例は,術後経時的に舌による食塊の移送力に改善がみられた.舌可動部亜全摘再建症例および舌亜全摘再建症例は,粘稠性の高い検査食の舌による食塊の移送は困難であった.
3)片側の顎二腹筋前腹・後腹,顎舌骨筋,オトガイ舌骨筋および舌骨舌筋を同時に切除すると舌骨の前方への挙上に制限がみられ,液状の検査食で喉頭侵入がみられた.また両側の顎二腹筋前腹・後腹,顎舌骨筋,オトガイ舌骨筋および舌骨舌筋を同時に切除すると舌骨の前上方への挙上に制限がみられ,液状の検査食で喉頭侵入が認められた.
4)舌可動部亜全摘再建症例の再建方法については,皮弁と口蓋が接触するような十分な大きさの皮弁で再建をおこなうことで,検査食の口腔内残留量を少なくすることができた.
5)舌亜全摘再建症例の再建方法については,口峡部をできるだけ狭くするようにし,かつ皮弁と口蓋が接触するような十分な大きさの皮弁で再建をおこなうことで,液状の口腔内保持が可能でかつ,口腔内残留量を少なくすることができた.
6)50Gyの術後放射線治療をうけた症例は,術後1か月目嚥下反射の遅延にともなう液状検査食の誤嚥を認めたが,術後6か月目には誤嚥は認めなかった.